かつて、この地に一人の若者がいたと言います。その名は坂田といい、彼は村人から一目置かれるほどの勇者だったのだとか。しかし、その勇敢さはやや過信気味で、ある日、彼は村を困らせているという大蛇を退治すると宣言したのです。
驚く村人たち、しかし彼らは坂田の勇気を讃え、その旅立ちを見送りました。それからほどなくして、坂田は大蛇の住むとされる森に足を踏み入れます。その時、彼の前に現れたのが、美しく、しかし一風変わった蝶々だったのです。その蝶々の翅には、精巧な時計の歯車と振り子が描かれていました。
その瞬間、坂田は時間が遅く流れる感覚に襲われたとか。それが時勇蝶との最初の出会いだったのです。
大蛇と対峙した坂田は、時勇蝶の力により、時間がゆっくりと進む中で戦いを始めました。しかし、彼はその力を過信し、大蛇に無謀に挑んだところ、時間は一気に加速。彼の攻撃は大蛇の鱗に反射してしまいました。坂田は恐怖に襲われ、その瞬間、時間はさらに遅くなり、その恐怖を永遠に感じるかのようになったと伝えられています。
大蛇には勝てなかった坂田ですが、命だけは無事でした。彼はその後、時勇蝶から学んだ教訓、すなわち、恐怖と勇気のバランスを保つことの重要さを、心に深く刻みました。
それからは村人たちも、時勇蝶を尊敬し、その伝説を語り継ぐようになったと言います。そしてこの故事は、年月を経て広く伝わり、今日まで語り継がれているのです。
これが、時勇蝶の伝説の一つです。過信の危険性と、恐怖と勇気のバランスの重要性を示す教訓として、私たちに伝わってきたのですね。