イシヒョウジ、またの名を心虚詐脅怪。その名が示すように、この妖怪の力は人間の弱さと恐怖を利用し、誤解と欺瞞を引き起こすことである。そして、彼の最初の被害者、企業のCEOである田中一郎はその力を痛感することとなった。
田中は大企業のトップとして成功していた。しかし、その成功は、一夜にして全てを失う恐怖に悩まされるようになる。そしてその恐怖が彼を心虚詐脅怪の餌食としたのだ。
ある日、田中は会社の株価が急落するという噂を聞きつけた。そしてその噂が、他ならぬイシヒョウジからだと知った時、田中の恐怖は頂点に達した。イシヒョウジは、田中の心の中にある心裡留保、つまり彼の不安や疑念を利用したのだ。
その夜、田中は深夜まで会社で働き、株価の噂が本当に起こり得るのかを確認しようとした。しかし、株価の動向は普段と変わりなく、何の問題もなかった。だが、田中の心の中では、イシヒョウジからの噂が真実であるという不安が消えなかった。
その結果、田中は大量の株式を売却するという決断を下した。だが、その直後、株価は急上昇。田中の会社は大きな損失を被り、彼自身もその地位を失うこととなった。
後に、田中はこの出来事を語った。彼は「それはまるで、私の心の中にある恐怖を読み取り、それを利用して私を操る何者かがいた。その何者か、それがイシヒョウジだったのだと思う。」と語った。
このことから、イシヒョウジの一つの能力「心裡留保」がどれほど強力であるかを知ることができる。それは、人の心の中にある不安や疑念を利用し、その人を自分の意志に従わせるという能力だ。そして、この能力の餌食となった人々は、彼ら自身の恐怖によって自分の人生を破壊されるのだ。