ども、てらかっぱです。
はてなで記事を管理していると画面右上にブログチャレンジというのが出ています。その中級編に小説を発表するというのがあったので、超短いけど小説を書いてみた。
カレーの王子様
「辛いものがいいわね。」
小柄で、美人というほどではないが、かわいいタイプの女だ。この辺りは学生街なので、どこかそのあたりの女子大生だろうか。下心も手伝い、彼女と大食い勝負をすることになった。快感と苦痛が同時に迫ってくる。『辛口カレー超盛、30分で食べられたら1万円』に俺は挑戦していた。一日の食費が浮いた上に一月分の食費も手にできる。運が良ければ女も。大食いの賞金は俺の収入の糧だ、しかし失敗もある。それゆえにエンゲル係数はかなり高い。辛いものも好きだ。困ったときは仕送りの唐辛子をそのまま食べたこともある。しかしこの店のカレーは異常だ。甘口カレーがすでに辛い。辛口と言えば本場インド人も「これはないな」というものだ。かねがね挑戦したいと思っていた。選択肢は3つ。勝って賞金を手にするか、負けて罰金をはらうか、それ以外だ。店の壁には勇敢な勝者と無謀な敗者の名前が掲げられている。勝者2に対して敗者3。確率は高いように感じるかもしれないが、気のせいだ。そもそも挑戦する者がいない。カレー屋なのにカレーを頼んだ時点で間違っているのだ。この店の一番人気はカルボナーラであり、奥さんの作るイタリアンなのだ。HPとMPがどんどん下がっていく。やめるならダメージの少ないうちがいい。笑顔を絶やさずパスタをゆでているマスターの顔が憎らしい。なによりこの挑戦した自分が憎らしい。朝三暮四朗。友人に勝手につけられた。今がよければよい。後のことは後で考える。本当にそうだなと納得するときがある。それが今だ。この挑戦には救済措置が設けられている。5分以内にギブアップを宣言すれば罰金は半額でいい。授業料をはらったと思えばいい。向かいに座って食べていた彼女が完食を宣言した、口をつけてから一切休憩はなしだ。マスターから、驚嘆と現金を獲て店を後にする。こいつプロだ。成功したら賞金を手にし、失敗したら俺におごらせるつもりだったのだろう。俺は授業料を払って店をでた。女は待っていた。
「甘いものは大丈夫?」
その後、痛いほど甘い食べ物があることを俺は知る。いや大甘なのは俺か。